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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)2032号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人新井行雄辯護人佐瀬昌三、同西村真人上告趣意第一點について。

廢銃即ち屑物となったものでない限りは、使用停止その他故障の爲め一時獵銃としての機能に障害のあるものであっても、通常の用法に依る手入又は修理を施せば機能を回復するものは、銃砲等所持禁止令施行規則第一條第一號に所謂「銃砲とは、彈丸発射の機能を有する装藥銃砲をいふ」ものに該當することは、多言を要しないところであろう。蓋し右の如きものは、銃砲等所持禁止令の對象たる武器としての危險性を有すること、寔に明らかであるからである。

偖て、本件村田式獵銃が獵銃としての機能、即ち前示施行規則第一條第一號の條件に缺くるところのなかったものであることは、(1)原判決擧示の證據である、原審公判調書中の各被告人の供述並びに本件獵銃(即ち昭和二十三年押第九八四號の一)を示されての證據調べにおいて、各被告人とも本件獵銃が機能喪失乃至機能障害中のものであることに關し、一言の之を爭いたる證跡のないこと(而して、所論が引用する記録二五丁の被告人栗原作之進に對する司法警察官の聽取書に關し、所論に依れば被告人栗原が被告人新井行雄より所持を得た後において被告人栗原が修理を施したものであるように記述されているが、之は誤りであって、當初の所持人である被告人新井行雄の所持中に、被告人栗原において既に修理濟のものであることが明らかである)。(2)原審における被告人三名の辯護人(辯護士片山秀頼、辯護士奥田三之助)においても、原審において前示機能の點に關して寸毫も之を爭わず、從って此點に關し證人及び、鑑定等の申請を爲したることなきは勿論、却ってその最終辯論において、辯護人とも「其の情状について述べ、氣の毒な事情が多々あるのだから、何卒罰金刑又は執行猶豫の寛大な判決をしていたゞきたい」と述べていて、本件獵銃がその機能に缺くるものでないことは、明らかに之を認めていた關係にあることは原審公判調書に依り明確であること。(3)原審がその適用法條において、前示施行規則第一條第一號(即ち「彈丸発射の機能を有する装藥銃砲をいう」との條項)を適用していること、即ち原審は本件村田式獵銃が、獵銃としての機能を有するものであることに關し、少しの疑點を容るゝの餘地なきまでに之を認定したものであること(尚本件獵銃は、當裁判所においても之を実見するところである)等に照し極めて明確なところである。果して然らば本件獵銃に對する獵銃としての機能に關し被告人並びに辯護人において寸毫の爭なく、原審裁判所においてもその自由心證の結果規則第一條第一號該當の銃砲として之を認定し得たものである以上は、更に所論の鑑定等を実施するの必要を見ないのである。蓋し此事は、若し本件獵銃が廢棄せられ、從って現品が公判廷に提出せられなかった場合でも、尚本令違反罪として處罰可能であることを考えれば一層明確である。されば原審には所論のような何等法令の解釋を誤り或は審理不盡等の違法はなく、論旨は理由のないものである。(その他の判決理由は省略する。)

仍って刑訴施行法第二條並びに舊刑訴法第四四六條に從い、主文のとおり判決する。

此判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重)

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